汚れは落とすが,歴史は残す。ケルヒャー「日本橋クリーニングプロジェクト」
今,東京の日本橋を通ると,上流側の川が見えないくらいに橋がしっかりとカバーされていますよね。
中で何が行われているか,ご存知ですか?
来年2011年の4月に架橋100周年を迎える,国の重要文化財である「日本橋」を記念して,清掃機器メーカーのケルヒャー ジャパン株式会社と、名橋「日本橋」保存会がタッグを組み,『日本橋』を洗浄・再生する 『日本橋クリーニングプロジェクト』を,2010年11 月1日から約6週間かけて実施しているところなのです。
今回は,「みんぽす・モノフェローズ」向けに,後にも先にもこれ一回きりの「日本橋クリーニングプロジェクト」体験イベントが開催され,僕もこれに参加してきました。
広報の,知的かつチャーミングな鈴木さんからケルヒャーとプロジェクトについての説明がありました。
ケルヒャー ジャパンは,高圧洗浄機の世界トップメーカーであるドイツ・ケルヒャー社の日本法人です。「ケルヒャー」は,欧米では単なるブランド名だけではなく,「清掃文化」の代名詞,さらには,高圧洗浄すること=「ケルヒャーする」という動詞にもなっているほどとのこと。世界約190カ国で洗浄機とシステムを販売している知名度の高いメーカーです。
実は,このケルヒャーという会社は,ボランティア活動の一環として,これまでもマウントラッシュモア国立公園の4人の大統領巨大彫像やエジプト・ルクソール西岸の遺跡「メムノンの巨像」,広島平和記念公園,バチカン市国の「サン・ピエトロ広場」,アメリカ・ニューヨークの自由の女神像,ドイツ・ベルリンの「ブランデンブルグ門」,ブラジル・サンパウロの「キリスト像」など,世界各地の歴史的建造物や彫像を洗浄する「クリーニングプロジェクト」を続けて,数多くのノウハウと技術を積み重ねてきました。洗浄年表
そして,今回は,「日本橋」というわけです。
このクリーニングプロジェクトを支えてきた名人に登場してもらいましょう。
↓
ケルヒャーの誇る洗浄スペシャリストのトルステン・モーヴェス(Thorsten Möwes)さんです。
マウントラシュモアで崖からぶら下がっていたヒトとは思えないほど,にこやかで親しみやすいヒトですね(写真は,ケルヒャー・ジャパンのホームページからお借りしました。)
これが,今回このプロジェクトに使われている温水高圧洗浄機「HDS 13/15S」です。
世界各地のクリーニングプロジェクトでは,その場の状況や環境に合わせて,例えば前述のマントラシュモアでは,電気も水もない場所なわけで,それ専用の機器を開発することまでやるそうですよ。
「クリーニング」に会社生命をかけてますね。このあたりが,同業他社との大きな違いなようです。
名前は初めて聞くヒトがまだ多いかもしれませんが,でも,この「黄色」のイメージカラーの機械,18番目に現地法人ができた日本でも意外と近くで活躍しているようですよ。
すでに日本橋の下流側のクリーニングはほぼ終了。川の上流側は,まだこんな風にシートでしっかりカバーされています。
洗浄の進め方は,4ステップです。
(↑クリックで拡大)
工程1:高圧洗浄。川の水をフィルターをかけてくみ上げ,100℃の温水にして圧力をかけて勢いよく噴射,汚れを落とします。
工程2:パウダー洗浄<1>。高圧洗浄で落ちないひどい汚れを,炭酸カルシウムのパウダーで洗浄して,全体的な色の調和を図ります(経年による変色は残る)。洗浄剤や化学薬品は一切使いません。
炭酸カルシウムのパウダー(40〜140μm)
このために,モーヴェスさんの他に,美術修復の専門家,フランス人のブリューノ・スコッニキさん,ギリシャ人のデスピーナ・コロコッツァさんも,このプロジェクトに参加しています。
工程3:パウダー洗浄<2>。黒く固い汚れの層がこびりついているところには,より強力なガラスパウダーで洗浄します。現在の日本橋は,花崗岩のみかげ石製。この花崗岩よりも洗浄用のパウダーは,かなりやわらかいものになっています。モース硬度で,爪よりちょっと硬い程度とのこと。もともとの素材を傷つけないことにも留意して作業しています。
ガラスパウダー(40〜80μm)
工程4:すすぎ。最後にもう一度高圧洗浄機で全体をすすぎ,パウダーが表面に残らないようにします。使用されたパウダーは,環境的に無害ですが,可能な限り回収してリサイクルされているとのこと。「石が呼吸できるようにしてあげることが大切なんだ」とモーヴェスさん。汚れがこびりつくと,石の中に残った水分が逃げられずにクラック(ひび割れ)を作ったりするようになるのだそうです。
おや,モーヴェスさん,クリーニングの終わった下流側の橋の一部を,僕らに見せたいようですよ。
あれ?クリーニングが終わったハズなのに,汚れが残ってますよ?
いや,これ,ただの汚れじゃないんです。
1942年の東京大空襲の時に日本橋に落とされた「焼夷弾」の痕なんです。
こんなところに,そんな歴史が…!ビックリですよね。
わざわざこれは「日本橋の歴史」として,残すのだそうです。もちろん,これは名橋「日本橋」保存会側との相談のうえ,決定されたようです。
汚れはしっかり落とすけれど,歴史も次の世代にまでちゃんと残す,なるほどなぁと思いましたよ。
で,温水高圧洗浄機のデモンストレーションを,スタッフの大塚さんが,してくださいました。
なんと,参加者にも,この銃を体験させてもらえるのだそうです。
水が放射されたときの「反動」のすごさに驚かされました。水が出始めたときだけじゃなくて,しっかりと持っていないと後ろに飛ばされそうなくらい圧力がかかっています。体力が要りますね。いや,第1段階だけでも,こりゃ,大変な作業ですよ。この写真は,同じくモノフェローズ仲間のしょういちさんに撮影していただきました。ありがとうございます!
続いて,橋の上流側の作業場で,実際のモーヴェスさんの作業を見せてもらえることに。
向こう側には,まだ真っ黒に汚れが残っている部分が。
こんなにキレイになりました。これ,橋の中じゃなくて,橋の外に足場を組んで作業場を作っています。
「この後,汚れが落ちにくい部分には,パウダー洗浄なんだよ」と,洗浄機(低圧パーティクルブラスト)を持ちながら,説明してくれるモーヴェスさん。
洗浄作業は12月中旬に完了して,国交省の方でも修復作業をした上で,新生「日本橋」のお披露目は2010年度内を予定しているとのこと。
ただ,洗浄するだけじゃなくて,洗浄することで,その美しさと文化,遺産の意味を次世代につなぐ,このケルヒャーならではの「クリーニングプロジェクト」。次は,世界のどこにスペシャリストが派遣されるのでしょうか。楽しみです。
日本の国道の起点となる日本橋が,その歴史の重みと戦争の爪痕とともに,美しい姿を次世代に引き継ぐためには,一度だけの洗浄ではもちろん足りません。たぶん,ここを通る車が出す排気ガスの量や影響を少なくするような取り組みも今後は必要になっていくのではないでしょうか。
ケルヒャーの心意気も,日本橋に残していきたいものですね。
というわけで,
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