「Qマウント」を長持ちマウントに!PENTAX Q 開発秘話と実写画像
PENTAXから,世界一小さくて軽い,レンズ交換式のデジタルカメラが発表されました。
「PENTAX Q」です。
(発表時の記事)
今年は,レンズ交換ができるデジタルカメラが豊作ですね。ここのところ次々と,パナソニックやオリンパスからもミラーレス一眼という小型ジャンルのカメラが発表,発売されています。
PENTAXは,「ナノ」一眼と銘打っていますが,「ナノ(nano)」は,「マイクロ(μ)」よりさらに小さい単位。
ええ,「マイクロ」フォーサーズ規格より小さいよという意味も兼ねているんじゃないかと。うがった見方かもしれませんが(笑)。
PENTAX Qは,小さくて軽いだけじゃなくて,高画質,高機能を謳っています。
デジタルカメラの心臓部,フィルムカメラでいうとフィルムにあたる撮像素子は,1/2.3インチのコンパクトデジタルカメラ用のセンサー。
発表時には,「小さなセンサーで写りはどうなの?」という声がかなり聞かれました。
実際のところ,ほんとはどうなんだろう?と僕も新宿の体験イベントにも出かけてみましたが,背面液晶で見る限りは,たしかにキレイだし,ボケるし,楽しいカメラだというところまではわかったのですが,データのお持ち帰りができなかったため,画質については,あまり確信を持てるところにまでは至りませんでした。
ところが,ユーザーフレンドリーで太っ腹なPENTAXは,なんとコアなPENTAXファンが多く集まる「みんぽす・モノフェローズ」のために,PENTAX Qの説明・撮影会を特別に開催してくれたのです!しかも,圧縮した画像をお持ち帰り可能に!太っ腹すぎます(笑)。
現時点でも,β版というよりは,α版に近い仕上がりのPENTAX Qですので,画質評価をする段階ではありませんので,撮影した実写画像は,WillVii株式会社みんぽす運営事務局側で,IrfanView 32 日本語版で,ピクセル縮小 80%,JPEG 画質 95,re-sample 処理(2-pass 圧縮)したものを掲載しています。
撮影したカメラ名は,写真の下につけてあります。画質や操作性,機能は,発売までの間に,かなりブラッシュアップしていきます。本記事についても,現時点でのインプレッションであることをお含み置き下さい。
というわけで,永田町にあるペンタックス・イメージングシステム事業部のオフィスに初めて潜入。
PENTAX Qの開発を担当した若代さん。
若代さんといえば…,PENTAX K-xに,上司にヒミツでクロスプロセス機能を入れちゃったヒトですよね。
これは,なにか,面白い話が聞けるに違いありません!
↓
実はペンタックスで,超小型のデジタル一眼レフの開発が始まったのは,ごく最近のことではありませんでした。
話は,10年以上前に遡ります。
PENTAX K-7 35mm
これは,1979年に発売された世界最小の一眼レフカメラ「PENTAX Auto 110」。110フィルムというカセット型の小さなフィルムを装填して使うカメラです。デジタルカメラではありません。当たり前ですね,30年以上前のカメラですから。
PENTAX K-7 35mm
一眼レフですから,レンズ交換ができます。しっかりとしたシステムになっていて,かなりの人気を博したカメラです。残念ながら,もう110フィルムを手に入れることが困難になっているので,このカメラを今使うことは,ほぼできません。
おや,auto110の後ろにオレンジ色のなにかが出てますね。
ちょっと覗いてみましょう。
PENTAX K-7
なんと基板が後ろにつながっています。
そうなんです,これ,auto110のデジタル版(試作機)だったのです。
このフォルムをリスペクトして出された「Optio I-10」という製品もかなり人気がでましたが,I-10はレンズ交換ができない,中身はコンパクトデジタルカメラです。目指したのは,レンズ交換の楽しさがコンパクトに楽しめる一眼カメラ。
この形で,この大きさで,なんとかデジタル化できないものか?と企画が始まったのが,今から10年前の2000年あたり。PENTAX最初のデジタル一眼レフ*istDもまだできていない頃です。その頃に,プロジェクトチームが発足し,「Auto110 digital」の企画推進を図るべく,まともな画像エンジンもないまま上のように,なんとか写真が撮れる試作機ができあがりました。これをもって,上層部に掛け合いましたが,「今やるべきことではない」と却下。
なんと,このPENTAX Qの開発は,10年以上も前からだったのですね。
で,その当時,2000年のフォトキナで発表されたのが,600万画素の35mmフルサイズ撮像素子を搭載するレンズ交換式デジタル一眼レフカメラの「K-1」
PENTAX K-7
まさか,幻のK-1が,Qと一緒にいるところを見られるなんて,思いませんでしたよ!
このK-1も,「製品化すると価格が非常に高価になるので売れない」との判断で,2001年10月に製品化の断念が発表された,伝説のデジタル一眼レフカメラです。
K-1を触らせてもらい,広々としたファインダーを覗きつつ,「今なら…」と思いましたよ。ま,今日は「Q」のお話です。
で,2000年以降も,auto110 digitalの企画・提案・検討は密かに続きつつ,若代さんが,2006年にサムスンとの提携で,一時企画を外れたり,645Dの開発凍結があったりと,auto110 digitalのプロジェクトは頓挫し,その上,2008年にマイクロフォーサーズ規格が発表されるなど,ペンタックス一社だけではどうにもならず,企画自体消えたかにみえました。
しかし,この後状況が変わります。
ケータイでの写真撮影,カメラ人口の増加により,一眼購入層が拡大し,
色とりどりで自分で色を選べるPENTAX K-x 100 colors, 100 stylesで,一眼エントリー層の取り込みに成功し,イメージセンサーの技術革新と画像処理エンジンの発展に拍車がかかります。
そんなとき,若代さんが,ふと,マイクロフォーサーズのカメラとマウントを見たとき,「ミラーレスは,auto110と比べると,まだまだ大きいな」と思います。
そして,事業部長が,超小型一眼カメラの検討を指示します。
その時が来ました。
まず,社内でどんな超小型一眼カメラを作りたいか,みんなでブレインストーミングが行われましたが,「光学ファインダーが欲しい」とか,「レンズ交換できなくてもAuto110フォルムを実現したい」とか,「巻き上げレバーをつけろ」とか,「液晶を外付けにしてボディを小型化しよう」とか,全くまとまりません(笑)。一言言わせてもらえば,みなさん,マニアックすぎます。
ま,当たり前の話なのですが,みんなが欲しいものって,ひとつじゃないんですよね。
なので,すべてのニーズを満たすことは諦めて,
「誰に買って欲しいか」を検討したところ,
「サブ用途の一眼ユーザー」,「ハイエンドコンパクト購入層」,「一眼購入検討層」のうち,一眼レフカメラの重さ,大きさ,扱いにくさで,一眼を諦めている「一眼購入検討層」に訴求するカメラを考えることになりました。
コンパクトデジタルカメラの購入層の1/3は,一眼の購入も検討しているのだそうですよ。
一眼は持っていないけど,購入したいと考えている人たちが考える「一眼の魅力」は,どこにあるかというと,
1.画質が優れている
2.高倍率のズーム撮影ができる
3.レンズを交換できる
4.撮影設定を自由に変更できる
5.レンズの品質が良い
6.個性的な写真が撮れる
7.奥が深く使いこなす喜びがある
…なんて,もう,一眼持っているんじゃないの?ってくらいよくわかってらっしゃるアンケート結果ですが,とくに回答者の中で,一眼の購入を検討する(したことがある)ユーザーの反応が高かった,画質,レンズ交換,撮影設定の自由度,個性的な写真撮影について,着目しました。
特にレンズ交換については,
1.お金がかかりそう
2.持ち運ぶには重そう
3.難しそう
というネガティブな意見に対して,解決策を探りつつ開発が進められました。
で,まとまったのが,
○圧倒的に小さくて手軽
○高画質&本格的一眼性能
○個性的な写真撮影機能
を実現すること。
まぁ,一眼レフは「大きくて,重い」イメージありますよね。
ペンタックスはフラッグシップでも,他社に比べればそんなに重くも大きくもないのですが,どうも重くて大きい方がよく写ると思われているフシも…。そのあたりも,なんとかしないといけないですよね。
個人的には,重いと持ち歩くのが面倒になったり,レンズ交換も億劫になったりしちゃうんですよね。苦行じゃないんだから,軽くて良く写れば,写真撮影の楽しさも倍増しますよね。
さて,ここからが本題。
センサーサイズのお話です。
一般的に,センサーサイズが大きいほど,画質は有利といわれてます。
なので,コンパクトデジタルカメラによく使われている小さなセンサーサイズのPENTAX Qは,発表時にかなり異論や不満,不安が出ました。
auto110のフィルム面の大きさは,フォーサーズのセンサーの面積とほぼ同じなのだそうです(マイクロフォーサーズも)。
センサーサイズを同じにしようとすると,実はだいぶボディサイズが大きくなってしまうとのことで,小さなセンサーを使わないことには,PENTAX Qのようにボディサイズを小型化することは不可能でした。
なので,高画質のまま小さなカメラボディを達成するためには,レンズを高性能なものにすること,画像エンジンを良くする必要がありました。
センサーサイズについては,現在コンデジで主流の1/2.3インチと,プレミアムコンデジに採用されることのある1/1.7インチに,早いうちから絞り込まれました。
しかし,社内でも,ここは,相当な議論があったようで,1/2.3派と1/1.7派で真っ向から対立するほどだったそうです。
結局1/2.3インチに落ち着いたのは,1/1.7インチの画質よりも,1/2.3インチの方が長く使われていることもあって,最適化された画像処理と画像エンジンが,1/1.7と同等の高画質を出してきたという経緯があります。
ただ,4年前に主流だった1/2.5インチが,今はほとんど使われていないことを考えると,将来的には,1/1.7インチが主流になって,画質も今の1/2.3インチよりももっともっと良くなることが考えられるため,
「センサーサイズとマウントには,余裕を持たせてある。」んですって。
えー!?
これ,みんながうわさで,正面切っては聞きにくいから,コソコソと言っていた部分ですよね。
「マウントに対して,センサーサイズがどうも小さいんじゃないか」とか,
「レンズ名に,焦点距離を使わないのは,センサーサイズが変わると画角が変わるから」とか,
きっと,しかるべき時期に,センサーサイズの大きな「Q」が出てくるかもしれませんね。
ただし,今書いたように,このボディに対して,画質的には,現時点で1/2.3インチがベストとのこと。
いやぁ,すごいことを聞いちゃいましたよ!
開発者自ら,認めちゃったわけですからね。
あー,びっくりした。
こんな重要なこと,僕らモノフェローズにゲロしちゃって,いいんですか?!
「センサーサイズに自由度を持たせ,長く使い続けて頂けるマウントにしたい」
とのこと。
今回の「Q」の発表で,ペンタックスは,古くからの「Kマウント」と中判の「645マウント」と,「Qマウント」の3つのマウントを,1つのブランドで持つことになりました。使いやすい一眼を作るために,新しいマウントを増やしちゃう,そんな会社,他にありませんって(笑)。すごいよ,ペンタックス。
これは,3種類のレンズを,それぞれ短い焦点距離のレンズから長いものまで揃えなくてはいけないということです。レンズマウントは,そうそう増やしたり,変更したりできるものではありませんからね。上の写真は,センサーサイズが小さい順にペンタックスの名機を並べたものです。
そして,Qで使えるKマウントアダプターも,考えてないわけではないとのこと。
もう,これを聞いただけで,今日来た甲斐がありました。
さて,ボディサイズを決めるファクターに,もう一つ,背面液晶モニターの大きさがあります。
ちょっと横長のauto110の高さを実現するには,小さな液晶にする必要がありましたが,これは実用的ではなかったようです。
PENTAX Optio WG-1 GPS
液晶サイズにあわせたモックアップもいろいろと作られて,検討されたようです。
これを見てもわかるように,液晶サイズが本体サイズを決めます。
ボディは驚くほど小さくしたいけれど,高画質を大型液晶で確認できるようにするバランスをとったところが,このQに搭載された,3.0型3:2HVGA液晶だとのこと。
それから,外装は,高級一眼レフカメラに採用されることが多い,マグネシウム素材が,PENTAX Qには使われています。
PENTAX K-7 35mm
ちなみに「PENTAX」ロゴの部分より下の高さが,ほぼAuto110と同じ高さになります。
開発段階では,その他にステンレス,アルミニウム,プラスティックが候補になりました。デザイン案が決定して,最終的に残ったのは,マグネシウムとプラスティック。しかし,プラスティックでは,剛性を保つためか,かえって大型化してしまうため,マグネシウムに決まったとのことです。
Qで初めて一眼につけられた「クイックダイヤル」と「交換レンズ」のお話は,実写画像と一緒に,また明日。
PENTAX Qは,レンズキットが8月31日発売です。
というわけで,
ぜひ,このレビューを「みんぽす」で評価してください。
(「みんぽす」の使い方)
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コメント
こんばんは!
この記事を読んで、
ますますPENTAXが好きになりました!
と同時に、
がぜんPENTAX Qが気になる存在に…!
投稿: ebapi | 2011.07.17 20:15
ebapiさん,嬉しいコメントありがとうございます!
PENTAXのカメラをもっと楽しんでもらおうという熱い想い,伝わったとしたら,幸いです。
Qのこれからの成長ぶりも,オーナーとして楽しめそうですね。
投稿: HAMACHI! | 2011.07.19 02:52
PENTAX Qの様々なお話しをありがとうございます。
現在Q-S1にはまっていますのですが、さらにいとおしくなりました。
風景撮影にキャノン製の一眼を使っていたのですが、スナップ撮影など、いつも持ち歩くには大きすぎます。
今ではQ-S1に02レンズをつけて、06レンズと一緒にバッグへ入れていつも持ち歩いています。
このサイズの本体とレンズで、この解像度ときれいな映像が一番で、次に本体デザインが気に入ってます。
PENTAX社だから開発販売できた製品で、レンズの品質を落とさずに提供していることに感謝感謝です。
海外での評価も高く、友人も欲しがっています。
Q-S1を最終製品にせず、レンズ性能の極みまで本体性能をUPした製品を、開発販売するのを楽しみにしています。
初期Qを懐かしむ声が多いですが、カメラの性能は確実に進歩しています。また、独特なデザインが他社高性能(?)コンパクトとの違いを明確にする存在感があります。
本当はレンズ毎にカメラ本体を分けて持ち歩こうと思いましたが、折角のレンズ交換ボディが台無しになるので、本体1台で画角を決めてレンズ交換しながら大切に使っています。
そして、次の性能アップした機種を待ちながらスナップ撮影を楽しんでいます。
投稿: ikedatti | 2016.05.08 11:15