なくしてきたものがここにある。「コクリコ坂から」
ほとんど予備知識なしに「コクリコ坂から」を,ユナイテッド・シネマ豊洲で観てきました。
東京オリンピック開催を目前に控えた1963年の横浜。女系家族の長女である松崎海は高校二年生。父を海で亡くし、仕事を持つ母・良子をたすけて、下宿人もふくめ6人の大世帯の面倒を見ている。そんな海は、同じ高校に通う新聞部の部長・風間俊に心を寄せるのだが……。 (あらすじ by goo映画)
最初にたくさんの登場人物が出てくるので,ちょっとこれは…?!と思うのですが,そのあと丁寧に1人1人の人物について,きちんと描き込まれていくので,混乱することはありません。むしろ,「ああ,あれはこのシーンとつながるのか!」と,ちょっとした感動が積み重なって,ストーリー展開もとても丁寧で,観る人の脳を整理させつつ,物語が進んでいきます。
自分の親くらいの世代,自分が子どもだった頃よりちょっと前の時代設定のようなので,そういえば,昔,祖母の家に,こういうものがあったなぁ…,炊事場はタイル張りで,お米は米びつに入っていて…ガスをつけるときはマッチを使ってたなぁ…,あ,ガリ版刷りは,やったなぁ。一文字一文字書いて,文集に仕上げたりして…。うん,これは懐かしい。インクの香りまで漂ってきそうです…,
なんて,いろいろと思い出したりすることもあって,とても懐かしく観ることができます。
↓
舞台は,横浜。
でも,今の僕らの年代以降は,たぶん全く知らない横浜です。
オート三輪が走っていて,魚屋も肉屋もみんな個人商店で,道はまだ舗装されていなくて…。
「千と千尋」の後,久しぶりに和の味付けのジブリが観たかったんですよね。ゲド戦記は興味もなかったし,アリエッティは,食指が動きませんでした。
坂があって,海があって,凛とした女の子がいて,けっきょくジブリテイストではありますけれど。
スケール感と想像力を刺激してくれる「千と千尋」は傑作でしたが,この世界にも,ずっと浸っていたいような優しさがあります。いつの間にかなくしてしまってきたようなものがここに。
もちろん,それと引き替えに豊かさと便利さを僕らは享受しているわけなので,昔は良かった…なんて言うつもりもありません。だって,この時代に生きていた記憶がかろうじてある程度ですから,関わり具合が無い分,それほど郷愁もありません。学生紛争だって,そういう時代があったんだよな…って程度なので,カルチェラタンの存亡を巡る学生達のやりとりも,あまりピンときません。そういえば,神田・駿河台・お茶の水近辺も「カルチェ・ラタン」って呼ばれてましたね。これも学生紛争の名残。でも,この映画の「カルチェラタン」の中は,今もあるなら,一部屋一部屋覗いて歩いてみたくなりますよね。昔は病院だったという「コクリコ荘」の中も。
エンターテイメントか?と言われれば,あえて抑えてあるのかもしれませんが,盛り上がりには欠けるかもしれないけれど,この世界にどっぷり浸れるのが気持ちいい映画ですね。そういう見方ができるヒトにオススメな映画だと思います。
松崎海の「海」は,フランス語で「ラ・メール」。なので,ちょっと短くして「メル」と彼女は呼ばれています。
彼女と恋心が生まれる風間俊との関係は,レイア・オーガナ姫とルーク・スカイウォーカーの関係なのか?!と思いきや…。
なんだかほっとするいい映画でした。
こんなこと,ホントにあったんじゃなかろうかっていうストーリーも,最初にも書きましたが,一つ一つのエピソードの積み重ねがうまくて,すっかりと映画に入り込みました。
67点
パンフレットは,うっかり買い忘れました。
コクリコ坂からビジュアルガイド~横浜恋物語~(amazon)でもいいかな。
DVDかBDが出たら,買いたいなと思います。
コクリコ坂からビジュアルガイド~横浜恋物語~(amazon)
コクリコ坂から ビジュアルガイド~横浜恋物語~監修:スタジオジブリ/編集:ニュータイプ(楽天)
【送料無料】コクリコ坂から サウンドトラック(楽天)
コクリコ坂から サウンドトラック(amazon)
iTunes Storeで,
コクリコ坂から歌集 - 手嶌 葵
コクリコ坂から サウンドトラック - 武部聡志
が試聴できます。
| 固定リンク
« プレミアムEXR AUTOがより賢く。富士フイルム「FinePix F600EXR」 | トップページ | Mac OS X Lion USB Thumb Drive「USBメモリ」での販売もスタート。 »
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 江戸の遊び心と人情にふれる。「のみとり侍」(2018.05.23)
- 痛快映画!『レディ・プレイヤー1』(2018.05.14)
- 『グレイテスト・ショーマン』(2018.04.28)
- 「リメンバー・ミー」(2018.04.11)
- 「劇場版 マジンガーZ / INFINITY」(2018.02.03)
コメント